かもめ食堂
かもめ食堂
ちょっとあらすじ
フィンランドのヘルシンキで日本食の「かもめ食堂」を経営しているサチエ(小林聡美)は、図書館で出会った「世界地図で指差したところがフィンランドだったのでこの地に来た」というミドリ(片桐はいり)を食堂のスタッフに迎える。
最初のお客は、日本アニメおたくの青年トンミ。長らくお客はトンミだけだったが、シナモンロールの香りをきっかけにボチボチお客が来るように。
悩みをかかえたフィンランド人、荷物が出てこなくなって困っている日本人(もたいまさこ)など、個性的なお客さんたちが、かもめ食堂に集まり始める。
つづめて言ってしまえば、客がまったく来ない日々から、満席になるまでの日々を追った映画。でもこんな言い方では身もふたもない^^;
原作群ようこ 監督荻上直子
「おまじないと笑いのツボ」
この映画を見てみようと思ったのは、数あるレンタルDVDの中でタイトルがふと目に付き、手にとってみたら、好きな女優さんの小林聡美さんともたいまさこさんが出ておられたから。
結果、7泊8日、毎日見たいと思い、そして毎日見ても飽きなかった。なんでここでこんな場面があるの?というところもあったが、これほど飽きない映画は、かなり昔に見た「インデペンデスデイ」以来。もっとも今インデペンデンスディを見て、面白いと思えるかどうかはわからない。あきないかどうかもわからない。映画を見た感想は、その時々の精神状態や生き方、夢憧れが反映されると思うのだ。
でも、何度読んでも面白い本があるように、精神状態に関係なく。何度見ても良い映画もあるのだ。それはまたいつか見た時にわかるだろう。
で、かもめ食堂。私の好きな場面は圧倒的に明るく清潔なキッチン。そのキッチンが映像の50%以上を占めていたように思える。そこで作り出される鮭の塩焼き、鳥のから揚げは輝く美味しさに見えた。そして、香りが伝わってきそうなシナモンロール。シナモンが苦手な私まで作ってみたくなり、実際トライまでした。
哀しいかな、トンカツ?ビフカツ? あれは、あまり美味しそうに見えなかった。輝きがなかった。カメラと光のせいかも。
この映画では、主人公のサチエさんが、なぜフィンランドまで来て食堂を開こうとしたのか(ミドリさんとの会話で「ここならできそうな気がした」という、なんとなくはぐらかしたような話があったが)、ミドリさんもどういうことがあって世界地図を指差したかの背景が詳しく語られていない。背景が見えないまま物語りは進行していくのだが、私はそこが好きだった(群さんの原作には書いてあるそうだ)。
来る日も来る日もお客が来ないかもめ食堂。毎日せっせとグラスを磨くサチエさん。
あまりに流行らない食堂に業を煮やしたミドリさんがお握りの具を提案をする。その提案を(他に思いがあるにせよ)受け入れ、実際に作り、試食をするサチエさんとミドリさん。こういう受け入れ方は好き。なんでもやってみなくてはわからない、食べてみなければわからない。
試す前から拒絶するより、試してから決めるほうが見ているほうも肩をはらずに興味津々で見られる。実生活も何に着けこうありたいと思った。
さて、最初のお客のトンミ・ヒルトネン。フィンランドではホントにトンミという名前があるのだろうか。あとで私が爆笑した場面のために、こういう名前にしたのではないかと疑った。
この映画で私の笑いのツボは「豚身・昼斗念」。トンミがミドリさんに自分の名前を漢字にしてくれと頼んだら、ミドリさんがスケッチブックに書いたのが、上の名前だった。私は吹き出し、声を出して笑った。
1週間見ていて、さすがに最後の方では笑わなかったが、4日目くらいまでは笑っていた。その場面があるとわかっていても笑えた。
そしておまじないは「コピ・ルアック」。私はコーヒー飲みなので、早速真似をして毎日コーヒーを入れる度に試しているが、チガイがわからないでいる^^;
この場面もおかしかったところがある。コピ・ルアックを教える俳優さんの手が震えていたことだ。お湯をそそぐポットを持つ手が微妙に震えていた。現地調達の即席俳優さんが緊張で手が震えていたのだろうかなぞと想像もした。
印象的というほどでもないが、心に残った一言はもたいまさこさん演ずる旅行者との会話の中で「いやなことはしないだけです」というサチエさんの言葉。
世の中、なかなかそういう風には生きてはいけないだろうけど、そういう生き方を選んだと言わんとしているのか、、、。
おしつけがましい思想的なものもなく、肩もこらず、どきどきもせず、楽しく見られた映画だった。あのキッチンにひたすら惹かれたのかも。
余談だが、ネットでシナモンロールの作り方を探し、シナモンパウダーを買い、家で育てている酒かす天然酵母液で作ってみた。実際のシナモンロールとはだいぶ違うだろうが(売っているのを買って食べたことがない)、まあまあの出来だったのではないかと自画自賛で、この感想を終える。